クレーム対応は対面や電話だけでなく、メールで行うことも多々あります。メールは文字だけで意思疎通をしなければならないため、対面や電話に比べてリスクが高く、細心の注意を払う必要があります。メールによる対応方法の注意点を理解しておきましょう。
クレーム対応をする場合はお客様と直接お話しすることが理想的であり、お客様からのクレームがメールで来たとしても、可能であれば電話でお話しするのが望ましいと言えます。
しかし、お客様の住所や電話番号が不明であったり、お客様自身がメールでの対応を希望している場合は、どうしてもメールで対応しなければならないことも多々あります。
メールでの対応が難しい最大の理由は、お互いの表情や声のトーンが一切わからず、文字のみでのコミュニケーションを行わなければならないという点です。文字だけでは気持ちや意図がうまく伝わらず、お客様がさらに怒ってしまうこともあります。
アメリカの心理学者であるアルバート・メラビアンが提唱したメラビアンの法則によると、話す人が聞いている人に与える影響は、視覚情報が55%、声のトーンなどの聴覚情報が38%、話の内容から伝わる情報はたったの7%しかないとされています。
つまり、話を聞いている人は93%を視覚情報に頼っており、話の内容は7%しか伝わっていないということになります。例えば、謝罪される場合は相手の頭を下げている姿勢、表情、謝罪の言葉を言っている声のトーンで謝罪の姿勢が伝わるため、なんと言って謝罪しているかはあまり重要ではないということになります。
メールでは、メラビアンの法則に従うとたったの7%しか得られない情報でやりとりする訳ですから、お互いの意図や感情を正しく伝えるのは非常に難しいと言えます。
双方の意思疎通がうまくいかず、お客様が余計に感情的になってしまい、クレーム解決が余計に遠のいてしまうこともありますので、電話や対面での対応以上に注意が必要です。
SNSがこれだけ普及している時代ですから、多くの人がネット上で文字を使ったコミュニケーションをすることに非常に慣れていると言えます。その一方で、文字だけのコミュニケーションは感情や意図がうまく伝わらず、人間関係のトラブルに発展する場合だってあります。
例えば、長いメールを送ったのに短いメールが返ってきた場合、とてもいい加減な印象、冷たい印象を受けてしまいます。長文を送った人は自分と同じくらいの長文が返ってくると思っていますので、短いメールに気分を害してしまうこともあります。
メールによるクレーム対応も同じであり、感情的になって怒りに満ちたクレームメールを送るお客様は、お店や会社から謝罪にあふれたメールが返ってくると考えています。
にもかかわらず、すごく淡白な内容であったり、謝罪の意思が感じられないメールを受け取った場合、お客様の怒りはさらに増大してしまいます。
メールは文字が証拠として残ってしまうため、その文面がネット上にさらされてしまうリスクがあります。怒りに満ちたお客様は、SNSやブログ、掲示板にメールの文面を引用したり、スクリーンショットを掲載することができ、そこに批判的なコメントが添えられることになります。
商品やサービス、さらにはお店や会社に不満を抱いている訳ですから、担当者とお客様のやりとりの経緯がすべて載ることはなく、文面が切り取られて悪い印象だけが伝わるようにされることもあります。
インターネット上で不特定多数の人がその書き込みを見ることで、事実ではない悪い情報がさらに付加されて拡散されることになり、企業活動をする上では大きなダメージを受けることだってあります。
そのため、メールで回答する文面はインターネット上に公開されるものと認識し、文面に問題がないか、間違った回答をしていないかを複数名で確認ののち、返信するようにしましょう。
意思疎通が行いにくいメール対応は、対面や電話での対応よりもさらに言葉遣いに慎重になる必要があります。お礼と謝罪を言い過ぎるくらいでちょうどよいとも言えます。
お客様は商品やサービスになんらかの不満があり、感情的になってメールを送ってきている訳ですから、まずはお客様の怒りを受け止める必要があります。そのため、まずは商品の購入やサービスの利用についてお礼を伝え、その上で不快な気持ちにさせてしまったことについて初期謝罪を行います。
お客様の要望に応えられる場合もあれば、答えられない場合もあります。応えられない場合、その内容でメールの文面を締めくくってしまうと、お客様を突き放した印象になってしまい、お客様の更なる怒りを買ってしまいます。
そのため、文面の最後は貴重なご意見をいただいたことに対する感謝の気持ち、貴重なご意見をサービス向上に活かしていく意思表示をすることが大切です。
以上のことから、クレームメールに対する返信文面の基本は、商品やサービスを利用してくれたことに対するお礼から始まり、次に初期謝罪、最後は貴重なご意見をいただいたことに対するお礼で締めるのが理想的です。決して、否定で文面が終わることのないようにしましょう。
クレームメールの内容は大きく分けると二通りあり、1つは商品やサービスで起きた不備に対する事例の話、もう1つはお店や会社に対する「意見」です。
すごく長いクレームメールが来た場合、大抵の場合は内容のほとんどが意見であり、お店や会社への批判、担当者への誹謗中傷などが含まれています。
メールで伝えられた事例については、初期謝罪と調査の約束をすることで一旦区切ることができますが、意見については、反論するようなメールを返すことは火に油を注ぐだけです。また、反論まではいかなくても、釈明や説明をすることもお客様を苛立たせてしまいます。
担当者が釈明や説明をするということは、「お客様の誤解や勘違いである」と言われているような気持ちになり、自分の意見を正当化しようと更なる主張を繰り広げてくる可能性があります。
場合によっては、担当者の言葉尻を悪く解釈し、担当者を糾弾したり、揚げ足を取るような投稿をSNSにする場合だってあります。
メールで何か言えば言うほど、お客様はより感情的になり、よりエスカレートすることがありますので、お客様の意見を肯定も否定もせず、ご意見をいただいたことに対してお礼を伝えることに終始する必要があります。
また、何度も同じことを繰り返しメールしてくる場合は、担当者によって言うことが変わらないようにし、一貫して同じ回答に徹する必要があります。そして、徐々に距離を置いて諦めていただくという収束の仕方もあります。
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