クレーム対応は企業活動を行う上で、避けて通ることができません。正しい対応を取ることで信頼の向上や顧客の獲得など、ビジネスチャンスが広がりますが、誤った対応は信頼を大きく損ない、多くの顧客を失うことにもつながります。クレーム対応をする上で知っておくべき「基本」を理解しておきましょう。
クレームは、企業が気づくことができなかった商品やサービスの不備、新たな商品開発へのアイデアなどになり得る財産であると言えます。しかし、可能であればクレームは発生しないに越したことはありません。
クレームが発生するということは、必ず発生に至る原因がありますので、「どうしてクレームが発生するのか」をあらかじめ理解しておくと、クレームの発生を未然に防ぐことができます。
クレームの原因は大きく分類すると、以下の3つに分けられます。
商品に欠陥がある場合や、サービスに問題がある場合などは、クレームをもとに改善する必要があります。特に、お客様に対して販売の際に説明した内容や、広告に記載されている内容が実際のものと異なっている場合は、それを信じて購入したお客様からは激しいクレームになる傾向があります。
お客様の勘違いや思い込みで、商品の誤った使い方をしている場合なども「商品が壊れている」などとクレームを訴えてきます。この場合、原因がお客様にある訳ですが、お客様に恥をかかせたり、プライドを傷つけるような伝え方をしてしまうと怒りを買ってしまい、二次クレームに発展してしまいます。
また、せっかく良い商品やサービスを販売していたとしても、接客態度が悪いことでクレームを受けることもあります。交換や修理で解決できるクレームと異なり、接客態度に対するクレームは解決が難しいと言えます。
お客様は「お金を支払った分、それに見合う接客を受けることができる」と考えていますので、それに見合わない接客態度であるとお客様が感じてしまうとクレームに発展します。
このような場合、当事者である店員が解決を図ろうとしても悪化する場合がありますので、店長などの責任者に対応を代わると比較的スムーズに解決に向かいます。
クレーム対応で失敗するということは、どういうことでしょうか。これはお店や会社の対応に納得していただけず、お客様がさらに怒ってしまうことを意味しています。
クレームの内容は星の数ほど存在し、訴えてくるお客様の年齢も性別も性格もさまざまです。つまり、クレーム対応を決まった定型文にすることは不可能であり、お客様の状況に合わせた親身な対応を心掛けることが解決の近道となります。
そのことを理解せずに、お客様が理解しにくい専門用語を並べ立てて自己満足のような説明をしたり、いかにもお客様が悪いと言わんばかりの説明をしてプライドを傷つけたりすれば、お客様の怒りを買うのは当然です。
また、商品やサービスに不備があったということが事実確認の結果わかったとしても、長々と言い訳がましく説明をしたり、お客様をうまく言いくるめようという態度が見え隠れすると、お客様との信頼関係が壊れ、不信感を抱かれるようになります。
クレームを解決に導きたいのであれば、商品やサービスの不備を認め、理由を長々と説明するのではなく、まずは正々堂々と謝罪をすることが大切です。
クレームを訴えているお客様は、商品やサービスの不備によって困っており、弱い立場にいると言えます。問題が解決できるのか不安を抱えて訴えてきている訳ですから、信頼できる人が担当するかどうかは、その後の解決に向けて非常に重要となります。
信頼できそうな人と、信頼できなさそうな人の違いはなんでしょうか?アメリカの心理学者が提唱した「メラビアンの法則」によると、人の印象は会ってから数秒で判断され、そのほとんどは「見た目の印象」で決まるとされています。
つまり、身なりは清潔感にあふれているか、だらしない恰好をしていないか、話し方はハキハキしているか、などが瞬時に判断されますので、見た目の印象が悪い人は、その後の対応でもずっと不信感を抱かれ、解決が遠のいていきます。
お客様に対して説明する内容が同じでも、見た目の印象次第で伝わり方も受け止め方もまったく異なる結果となりますので、お客様との信頼関係が築けるよう、今一度自分の身なりや態度をお客様の立場に立って見直してみましょう。
クレームを訴えるお客様は、必ずしも来店する訳ではありません。コールセンターのように電話受付が整備されている会社なら別ですが、ある日突然にお店や会社の電話にお客様から外線がかかってきて、クレームを訴えられる場合があります。
対面であろうと、電話であろうと、クレーム対応の基本の流れは変わりません。まずは初期謝罪に始まり、そこから状況を把握するためにお客様のお話を伺う必要があります。
対面でお客様と話をする場合は、お互いの表情や様子がわかることでコミュニケーションがとりやすいのですが、電話では視覚情報が一切なく、話し方や声のトーンでしか相手の様子を知ることができません。
そのため、意思疎通が非常に難しく、誤解を招くこともあるため、話し方などに細心の注意を払わなければなりません。特に、声のトーンが単調になりすぎると「事務的」な印象を与えてしまいますので、話し方に強弱をつけることが大切です。
また、クレームの状況を直接見て確認することができないため、お客様により詳しく説明をしてもらわらければならず、状況把握がしにくいというデメリットもあります。
クレーム対応でよく起こるのが「言った言わない問題」です。例えば、お客様は「担当者が金銭補償する」と言っていたと主張し、担当者は「そのようなことは言っていない」と主張する場合です。
クレームを訴えてくるお客様は感情的になっていることが多く、担当者も突然お客様に怒鳴られて頭が真っ白になっていることもあります。そのような状況下でどのような会話のやりとりがあったのか、双方が正しく記憶していることは困難です。
時には、お客様が自分の都合の良いように物事を解釈し、お客様の希望がすべて受け入れられたかのように主張してくる場合もあります。
人間の記録はあいまいですので、クレーム対応に限らず、さまざまな場面でこの言った言わない問題は起こりますが、クレーム対応の場合は解決に至るどころか、問題がこじれてしまいますので、お互いの主張をしっかりと記録しておくことが大切です。
特に相手が悪質クレーマーの場合は、メモではなく、ボイスレコーダーでしっかりと会話を残しておくことが、後々裁判になったとしても重要な証拠として役立ちます。
クレームが起きた場合、それは担当者や当事者の問題と考えている会社があるのであれば、それは大きな問題です。商品やサービスに問題がある場合、それは間違いなくお店や会社の問題となります。
担当者の接客態度が悪いというクレームを受けたとしても、それもまた担当者の問題ではなく、そのような従業員教育を行ったお店や会社の問題です。
クレーム対応は担当者に多大な精神的負担をかけることになるため、組織の問題として捉え、担当者を孤立させず、組織として取り組んでいく体制をつくらなければなりません。
また、一度起きたクレームは商品やサービスが改善されない限り何度でも発生することになりますので、組織内でしっかりと情報共有を行い、どのようなクレームが発生しているのか、どのように対処したのか、今後どうしていくのかを確認しておくことが大切です。
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