クレームの内容は千差万別ですが、どんなに難しいクレームでも、どんなに困ったクレームでも、大きく分類することができます。クレーマーのタイプを予め理解し、タイプ別に合わせた迅速な対応をすることができれば、被害の拡大を食い止めることが可能となります。
近年、個人の権利意識の高まりとともに非常にクレームの数が増えており、サービス業だけでなく、さまざまな業界での悩みの種となっています。
もちろん、商品やサービスに問題があり、正当な主張をしている一般消費者もたくさんいますが、なかには明らかに不当で理不尽なクレームを訴えてくる、いわゆる「クレーマー」もたくさんいます。
クレームと一言で言っても、クレームの内容は千差万別あり、訴える人の性格もバラバラです。しかし、どんなに難しいクレームでも、どんなに困ったクレームでも、大きくタイプ別に分類することができ、そのタイプに合わせた対応を心掛けることで解決に導くことができます。
クレームの初期対応として、まずは相手のタイプを把握し、タイプ別に合わせた迅速な対応をすることができれば、クレームの拡大を食い止めることも可能となります。
また、クレームが来ていなくても日頃からそのようなクレームがあることを想定し、対応を現場でシミュレーションしておくと、困難なクレームに直面してもスムーズな対応をすることができます。
昔から商売の基本として「お客様は神様」という言葉があります。どんなサービスを提供するにしても、そのサービスに対価を支払うお客様があって初めて、商売は成り立ちます。
ただ、ここで問題なのが、お客によっては本当に自分のことを「神様」と同等だと勘違いしている場合です。「神様のいうことは絶対」くらいに考え、お店や店員に対して不当な要求をしてきます。
一つ言えることは、お客様は大切ですが、サービスと対価はイコールであり、お客様とお店は対等であるのが原則です。それを勘違い、または履き違えて無理難題を主張してくるのは、クレーマー以外の何物でもありません。
もちろん、お客の満足度を高めることは非常に大切な事ですが、「顧客満足度の向上」と「理不尽な要求」の違いを考え、できないことはできないとはっきりいうことが大切です。
相手がなぜそのような主張をしているのかを考え、正当な主張をしているのか?金銭が目的なのか?ただのストレス発散なのか?精神疾患を抱えているのか?など状況を把握し、きちんと「できない」ということを伝え、それでも無理難題を訴えるようであれば「しかるべき措置をとる」という警告を伝える必要があります。
電話応対でも、来店でも、突然大声を出してブチ切れてくるお客様がいます。お客様は怒りのエネルギーを蓄積して大声を出してきますが、なんの心構えもしていない店員にしてみたら、面食らって非常に驚きます。
このようにキレている人の場合、理由はさまざまあります。自分が買ったもの、受けたサービスに不満があり、怒りの矛先が見つからないことで漠然と怒りをため込んで噴火するタイプ、商品に過剰な期待をしていたり、ものすごい大切な記念日に期待以下のサービスを受けたなど、思い入れが強いタイプなどが挙げられます。
このような場合、怒りのエネルギー量は半端ではないので、キレてエネルギーが放出している最中に言い返すなど、火に油を注ぐようなものです。理不尽な主張があるかもしれませんが、まずは相手の話をしっかり聞いてガス抜きを行い、冷静になってもらう必要があります。
このようなタイプのクレームの場合、いつまでも大声の怒りが続くことはありません。あふれんばかりの気持ちを出し切れば、お店側の話を聞く気持ちの余裕も出てきますので、まずは相手の主張にしっかりと耳を傾け、どのようなことに怒っているのか分析する必要があります。
また、怒りの矛先となっているスタッフが対応する場合は怒りがさらに膨張する場合もあるため、対応するスタッフを替えたり、静かな場所に移動すると、怒っている人の気持ちが落ち着きを取り戻すこともあります。
たまに「えっ!?」と耳を疑うようなクレームを受けることがあります。それは従業員にとっては世間の常識すぎて、一瞬「何を言っているのか意味がわからない」と困惑します。
そこでついつい「そんなの常識ですよ」というような態度をとってお客様に恥をかかせてしまうと、本来そこまで怒っていなかったお客様の怒りを買い、本来のクレームから脱線してしまうことがあります。
例えば熱いスープを提供する場合、従業員は「スープは熱いもの、熱いうちに提供しないと」と考えていますが、熱いスープを飲んでやけどをすると、「熱いなんて聞いていないぞ!」とキレられることがあります。
この場合、「そんなの当り前じゃないですか」などという態度を見せればお客様の怒りが接客態度に及んでしまうのは目に見えています。
このような場合は、「説明が行き届いておらず、ご迷惑をお掛けして申し訳ございません」「お客様のご指摘を次回のサービス改善に役立てさせていただきます」などと謝罪や感謝の態度を見せることで、お客様の怒りが和らぎます。
お店や従業員にとって常識だと思っていることも、ひょっとしたら世間では常識ではないのかもしれません。「当たり前」「そんなの常識」という概念を捨て、そのような考え方もあるんだと受け止めることがサービス向上につながります。
家電やパソコン、車などに多い事例ですが、いわゆるマニアで、そのジャンルに非常にのめり込んでいる人がクレーマーになるケースがあります。
もちろん、従業員はそのジャンルのプロなのですから、お客様の知識に負けないことが何よりです。しかし、そのジャンルの中でも特定の部分に特化した知識となると、マニアには敵いません。
そのお客様がただ詳しいだけならよいのですが、「そんなことも知らないのか?」「従業員教育がなっていない」などと従業員や会社を批判したり、故障した場合に通常知りえないような細部の仕組みについて説明を求めたりなど、専門家気取りでクレームをつけられたら敵いません。
ただ、金銭などを要求する不当なクレームと異なり、そこまでの悪意はないことから、無理に知識で対抗しようとせず、お客様に教えを乞う姿勢を示すと、お客様の満足度が上がることがあります。
昔似たような仕事をしていたとか、退職して時間を持て余し、自分の過去の経験を聞いてほしいなどの気持ちから、お店に現れては店内のレイアウトや接客態度、品ぞろえなどについて、あれこれ指導してくるお客様がいます。
いわゆる、暇をつぶしたい、感謝されたい、自分の権威を示したいというタイプに当てはまります。
大抵は初回の指導時に従業員から「ご指摘ありがとうございます」と感謝の言葉を伝えられたことで気分を良くし、何度もお店に足を運んでは指導を繰り返します。
お客様は時間を持て余していますが、ずっと話を聞かされる従業員にとっては業務の支障となり、迷惑行為となります。
このタイプの場合、本人は良かれと思って行動しているため、決して悪意があるわけではありませんが、従業員に迷惑であるかのような態度をとられると、接客態度など別なクレームとして怒り出す場合があります。
ただし、だからと言っていつまでも話に付き合うのは難しいことですので、ご指摘に対する感謝の気持ちを伝えつつ、業務の支障とならないような配慮をやんわりとお願いする必要があります。
また、「今後も大切なお客様として温かく見守ってほしい」という言葉を添えることで、角が立たず、お客様の気分を害さずに伝えることができます。
このタイプのクレームは、「タイプB 常識が通じない非常識な人」と非常に似ています。やはり「えっ!?」と耳を疑うようなクレームを訴えてきます。
このタイプで一番多いのが、いわゆる「異常な潔癖症」です。「この世はばい菌だらけであり、自分は無菌である」というくらいの極端な価値観のもと、「いかに自分にばい菌がつかないようにするか」ばかり気にしています。
ですから、部屋の汚れ、商品の汚れ、食器の汚れなどで、通常の人では気にしない汚れと呼べないレベルの汚れもクレームとして主張してきます。
場合によっては、「その汚れによって自分の健康を害してしまった、どう責任を取るんだ?」というクレームにも発展してしまうため、対応には注意が必要です。
このよう場合、「そんなわずかな汚れくらいで」などという自分の価値観を持ち出さず、汚れがついていたのは間違いないこととして素直に謝罪し、それによって気分を害してしまったことに共感し、交換できるものは交換する、清掃できるものは清掃するといった対応を取ります。
そのわずかな汚れと将来の病気を結びつけるのは理不尽ですが、頭ごなしに「病気に関してはうちに責任がない」という態度を取らず、「検査によってうちの責任が明確になりましたら、適切に対応致します」とお伝えしましょう。
被害妄想なのですから、本来は加害者は誰もいません。しかし。被害妄想を抱く人は「常に自分は被害者、誰かが加害者」だと思っているので、何もしていない従業員に対して食って掛かってくることがあります。
例えば、笑顔で接客しただけで「自分のことを笑った」、嫌な顔をしていないのに「自分を見て嫌そうにした」、従業員同士で話をしただけなのに「自分の悪口を言っていた」など。
そんなつもりがないのですから、言われた方はたまったものではありません。でも、被害妄想をしている人にとっては揺るぎのない事実であり、謝罪を受けないと気が済まない状態となっています。
このような場合、対応を間違えば「年寄りだから差別したのか?」「お金がなさそうだから差別したのか?」などと弱者を差別したかのようなクレームに変わってしまうこともあるため、言動には注意が必要です。
当事者が謝罪してもなかなか信じてもらえないことが多いため、他の従業員や責任者が「誤解であること」「そのようなことをする従業員ではないこと」を説明し、納得してもらうことが大切です。
いつまでも過去のクレームにこだわり、いつまでも自分が被害者であるような態度をとるお客様がいます。クレーム内容がお店側に非があったとしても、すでに謝罪や保証が済んでいるのであれば対処済みであることに間違いありません。
しかし、過去のクレームを持ち出して、いつまでも自分に便宜を図るよう求めてくる場合があります。特に担当者が変わった場合、前の担当者はクレーム対応として便宜を図っていたものの、担当者が変わったことで便宜が図られなくなったというクレームをつけられることがあります。
しかし、あくまでも過去のクレームは対応済みであるため、お店や会社にとって不利益が生じているのであれば「お客様」であるとは言えません。失礼に当たらないよう言葉を選びながらも、きっちり断る姿勢を見せることが大切です。
小さなクレームから始まったことでも、それによって二次被害、三次被害を訴え、いつまで経っても謝罪と要求を繰り返すお客様がいます。このようなことが続くと、そもそもクレームがなんだったのかわからなくなります。
また、いちいちクレームに応じていれば際限なく謝罪と要求が続き、どんどん厄介なクレーマーと化してきます。顧客満足度を追及して要求に応じ続けるのではなく、冷静に本来のクレームがなんだったのかを分析する必要があります。
そして、お客様に対してはこちらとして「できること」と「できないこと」をはっきりと伝える必要があります。その上で、お客様の主張が二転三転して業務に支障が出る場合は、お客様と向き合うよりも行政機関や専門家に相談するようにしましょう。
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