クレーマーの手口として、担当者を動揺させて金品や理不尽な要求を受け入れさせようとしてきます。担当者も不安を煽られてしまい、要求を受けてしまいそうになりますが、クレーマーがどのような言動をするのかを予め理解しておくと、冷静に対応できるようになります。
クレームというものは、まずはお客様が感じた不満や怒りについて訴えるところから始まります。商品が壊れていたなど正当なクレームが主であり、通常は商品を交換したり、返金に応じることでクレームは解決に至ります。
しかし、悪質なクレームの場合はそれだけでは納得がいかず、商品を無料にさせたり、割引を要求したり、慰謝料を求めたりするなど、不当要求に該当するクレームも散見されます。
当然そのような要求がスムーズに通るわけではなく、お店や会社も断ろうとしますが、自分の要求が通らないとわかると、激高したり、脅し文句を言って、何が何でも自分の要求を飲ませようとする場合があります。
このようなシーンでよくクレーマーが使うセリフにはある程度パターンがあるため、そのようなセリフを使う相手がどのようなことを考えているのかを知っておくと、クレーム対応が比較的スムーズにいくようになります。
インターネットが普及する以前は、個人の意見を社会に伝えることは非常に困難でしたが、現在はこれだけインターネットが普及し、ツイッターなどのSNSや書き込みサイトを使うことで、自分の意見を世界中に発信することが可能となりました。
実際、企業の対応の悪さがネット内で暴露され、いわゆる「炎上状態」になることで企業のイメージがダウンするなど、企業活動をする上でネット上での評判は非常に重要となっています。
そこを逆手にとって、自分の理不尽な要求が通らない場合に「ネットに流すぞ」と脅しをかけてくる人がいますが、そのような脅しに屈してはなりません。
ここで中途半端に金銭を渡すなどの要求に応じると、今度はそのことがネットに流されたり、繰り返し脅されたり、同じようなクレーマーが押しかけてくることがあり、悪しき前例をつくるだけです。
このような状況においては、クレームに対してできる範囲での誠実な対応を取り、ネットに流す流さないについてはお客様の判断に任せるようにしましょう。
インターネットやSNSが普及する前は、脅し文句としてこのセリフが多かったと言えます。イメージとしては新聞や週刊誌に取り上げられることですが、法的に罪になるようなことをしている訳でないのであれば、マスコミがいちいち取り上げることはありません。
マスコミも不確かな情報を報道する訳にはいかないため、マスコミへの投書があったとしても、根拠がなければ報道することはなく、小さな内容に対していちいち裏を取るための取材はしません。
むしろ、マスコミにリークするぞと脅されて金品を渡すようなことがあれば、口止めをして隠ぺいを図ったということになり、さらなる脅しを受けるか、社会的に罰せられます。
どんなクレームでも誠意のある対応をするのが大原則であり、都合の悪いことを隠ぺいしようとしたことがバレた方が大きなダメージを負うことになります。
そのため、悪いことをしていないのであれば、このような脅し文句に動じることなく、お客様の判断に任せるようにしましょう。
現場での対応がしっかりしていてクレーマーの要求が通らない場合に、クレーマーが高い確率で言うのが「上司を出せ」「責任者を出せ」「社長を出せ」といったセリフです。
自分の要求が通らないため、決裁権のある上司であれば要求を飲ませることができると考えてのセリフですが、いちいちクレームがあるたびに上司を出すわけにはいきません。
上司はクレーム対応が行き詰った際の切り札となりますので、まずは現場で対応している担当者が責任を持って対応し、上司を出せと言われても、「私が担当者ですので、私の方で責任を持って対応致します」「お客様のご意見は必ず上司に申し伝えておきます」といった対応を取ります。
ただし、クレームの原因がその担当者の接客態度などである場合は、その担当者が対応し続けることでクレームがエスカレートすることがありますので、その場合は店長などの上司が対応した方が速やかに解決することがあります。
また、クレーム対応を上司に代わる場合は、クレームの経緯とこれまでの対応をしっかりと引き継ぎ、会社としての対応にブレがないようにしましょう。
「誠意を見せろ」は、クレームが発生した際に過剰な謝罪や見返りを求めようとする場合によく使われるセリフです。ここで言う「誠意」という言葉の解釈が非常に難しく、誠意をどう解釈するかを相手に投げかけているのがポイントです。
その誠意という言葉の陰に「タダにしろ」「割引しろ」「サービス券をよこせ」「慰謝料をよこせ」などといったお客様の意図が隠れています。お客様が具体的に慰謝料として金品を要求すると恐喝に当たるため、このようなぼやかした、担当者の判断に任せた言い方となっています。
クレーム対応の原則は「原状回復」です。料理に異物が混入していれば料理を作り直す、服を汚してしまった場合はクリーニングできれいな状態に戻す、商品に不具合があれば新しいものに取り換える、といった感じです。
迷惑をかけてしまったのですから、原状回復に加えて値引きしたり、サービス券を渡すといった対応もあるかと思います。しかし、それ以上の謝罪や要求、つまり土下座の強要や慰謝料を求めてきた場合は、応じられないということを伝える必要があります。
また、「お客様がおっしゃる誠意とはどのようなことでしょうか?」と相手に投げかけてみるのも効果的です。恐喝にならないよう言葉をぼやかしている訳ですから、本当にわからないふりをして相手に聞いてみると、相手もどうにもならず、引き下がる場合があります。
「保健所に通報するぞ」は飲食店のクレームで多いセリフですが、保健所が食中毒として処理をすれば営業停止になり、店舗にとって大打撃となることを見越した脅し文句です。
飲食店でのクレームには、提供した食事との因果関係がわからない体調不良を訴えるお客様が現れることがあります。また、お店の対応が気に入らず、腹が立って困らせてやろうとこのようなセリフを言う場合もあります。
もちろん、食中毒が疑われる場合は、お客様ではなく、自ら速やかに保健所に連絡する必要があります。
しかし、食中毒が疑われず、因果関係もわからない場合には恐れる必要はありません。そのセリフに動揺して金品を渡してしまうほうが、何かを隠ぺいしたことになり、後々大きな問題になりかねません。
逆に自ら保健所に連絡し、「お客様からそのような訴えを受けたが、他の客からはそのような訴えはない」と伝え、先手を打っておくと効果的です。
クレーム対応がうまくいかず、イライラしたお客様が対応を迫ってくることがあります。クレームが発生した場合に速やかな対応は大原則ですが、面倒を避けようと金品を渡して速やかな解決を図るのは得策ではありません。
クレーマーによっては、恫喝まがいに対応を急かすことで担当者を焦らせ、パニックにさせて金品を受け取ろうと考えている人もいます。特に悪質クレーマーの場合は相手が冷静に考えられないよう、急がせる場合が多々あります。
いずれにしても、速やかな返答ができない場合は余裕を持った回答期限を相手に伝えるようにします。怒りでイライラしている人にとっては、たった数分でもとんでもなく待たされたと感じてしまい、そのことが新たなクレームにつながってしまいます。
「すぐに」や「後日」などという表現は人によって解釈が異なりますので言わず、「1時間後に」や「3日後に」といったように、具体的な時間を相手に伝えることが、トラブルを避けるのにとても大切です。
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