クレームは必ずしも来店ばかりではなく、電話で対応しなければならないことも多々あります。電話での対応は対面に比べて意思疎通が難しく、誤解を招いてしまうこともあります。電話でのクレーム対応のポイントについて知っておきましょう。
■ 顔が見えないと意思疎通が難しい
クレームを訴えてくるお客様は必ず来店する訳ではなく、電話でのクレームも非常に多くあります。そのため、電話では顔も表情もわからない状態での対応を余儀なくされてしまいます。
電話での対応が難しいのは、お互いの表情が見えないことによる意思疎通の難しさです。アメリカの心理学者であるアルバート・メラビアンが提唱した「メラビアンの法則」によると、話し手が聞き手に与える印象は視覚情報が55%、声のトーンなどの聴覚情報が38%、話の内容はたったの7%しかないとされています。
つまり、対面することができない電話では55%を占める視覚情報が失われるわけですから、話し方や声のトーンなどが非常に重要な要素となります。
言葉による謝罪の伝え方が上手ではない担当者だったとしても、非常に申し訳ないという表情や姿勢を目にした場合、お客様には担当者の気持ちが伝わります。しかし、それが見えない電話では謝罪の言葉が上手に伝わらないだけになってしまい、お客様の怒りを買ってしまうことにもなります。
■ 思わぬ誤解を招くことも
担当者が緊張して声がうわずったとしても、対面では緊張した様子が伝わりますが、電話では「ふざけて話している」「せせら笑っている」かのように捉えられ、誤解を招いてしまうことだってあります。
また、電話ではお客様の様子も知ることができませんので、お客様の表情や様子を知ることができない状態で話を進めなければなりませんので、対面以上に話し方、聞き方には注意を払う必要があります。
■ 状況を直接確認できない
お客様が来店してクレームを訴えてくる場合は、状況が比較的わかりやすいと言えます。商品に不良があった場合は、現物が持ち込まれることが多いからです。また、商品で怪我をしたとしても、その状況を直接見ることだってできます。
しかし、電話でのクレーム対応では現物や現状を確認できず、お客様に詳しく話していただき、その話をもとに状況を整理し、記録していく必要があります。
もちろん、電話でクレームを受け付けた後に当該商品を郵送してもらったり、状況写真を送ってもらう、近くの営業所から担当者が訪問するなどの対応が取れることもありますが、初期対応で得られる情報量は対面での対応に比べて非常に少なくなります。
■ 録音やメモなどの記録が大事
感情的になっているお客様は早口でまくし立てるようにしゃべることがあるため、初期謝罪で感情を鎮めて冷静になっていただき、わかりにくいところ、重要なところは復唱してしっかり確認するようにします。
また、コールセンターでは電話応対が録音されていますが、会社にかかってきたクレームの電話も可能な限り録音し、改めて会話内容が確認できるようにしておくことが大切です。
電話でのクレーム対応といっても、対応の流れは対面と変わりなく、お客様の怒りを鎮める初期謝罪に始まり、状況を把握する傾聴、事実確認の調査、過失があった場合の謝罪、そして対応策の検討と提示ということになります。
お客様は程度に違いはあるものの、多少なりとも「怒り」の気持ちを抱いて電話をかけてきていますので、状況を正確に把握するためにも、お客様の気持ちを鎮め、冷静に話ができる環境をつくる必要があります。
■ 初期謝罪で冷静になってもらう
そこで重要なのが初期謝罪と、お客様への気遣いの言葉です。責任の所在がわからない状況で安易に謝罪すべきではないという意見もありますが、怒りの気持ちに満ちたお客様はお店や会社に謝ってほしいという強い欲求を持っています。
ここで言う初期謝罪とは、過失や責任を認めての謝罪ではなく、あくまでお客様に商品やサービスの利用によってご不快な気持ちにさせてしまったことに対する謝罪となります。
そのため、責任を認めた訳ではありませんが、お客様は「謝ってほしい」という最初の欲求が満たされたことで、怒りの気持ちが鎮まり、冷静に話ができる環境をつくりやすくなります。
また、お客様は商品やサービスによって「大変な迷惑を受けた」と感じている訳ですから、クレームの内容に合わせて「お体は大丈夫ですか?」「お怪我はありませんでしたか?」などと気遣いの言葉をかけたり、商品やサービスを利用していただいたことに対する感謝の気持ちを伝えるのも、お客様の怒りを鎮めるのに効果的です。
■ クレーム内容は必ず復唱する
電話では直接状況確認を行うことができないため、お客様の言っていることをしっかりと聴きとり、状況把握を行わなければなりません。情報量が少ない以上、お客様が訴えている状況を整理し、正確に記録に残す必要があります。
そこで重要なのが「クレームの復唱」です。お客様は感情的に話していますので、部分的に正確ではない情報が含まれていることもあります。また、担当者に対して正しく伝わっているのかという不信感を抱いている場合もあります。
そのため、お客様が訴えているクレーム内容を整理し、復唱することで、クレーム内容をお客様に確認してもらう、話が正しく伝わっていることをアピールすることが可能となります。
お客様によっては感情的になるあまり、何度も同じことをひたすら話し続ける場合がありますので、こちらからの復唱を入れることで話の流れに変化をつけ、解決に向けて話を前進させることができるようになります。
■ 話し方にメリハリをつける
意思疎通がしにくい電話でのクレーム対応は、話し方や声のトーンにより気を配る必要があります。お互いの表情がわからない訳ですから、話し方や声のトーンからしか相手の情報がわかりません。
トーンが一定になり過ぎると「事務的な対応をされている」と思われ、普通の話し方をしたつもりでも「冷たい対応」「横柄な対応」と受け取られることがあります。
クレームを訴えているお客様は感情的になっている訳ですから、言葉尻1つでも揚げ足を取られることがあり、声の強弱やトーンにメリハリをつける、言葉遣いは頭が下げられない分、最大限丁寧にするなどの工夫が必要です。
■ 電話が聞き取りにくい場合の伝え方
また、音声からしか情報が得られない電話ですが、相手の声が非常に聞き取りにくいことがあります。すべてのお客様がハキハキと大きな声でしゃべってくれる訳ではなく、声の小さい人、滑舌が悪い人もいます。
また、お客様の周りが騒がしかったり、携帯の電波状態が悪く、聞き取りにくい、ほぼ聞こえないということもあります。
その際に絶対にやってはいけないのが、聞き取りにくいことをお客様のせいにすることです。「もう少し大きな声で話していただけますか」とついつい言いたくなってしまいますが、クレームで電話しているにも関わらず、自分が悪いように言われることで、お客様は余計に感情的になってしまいます。
このような状況では、「お電話が遠いようです」「周りが少し騒がしいようです」「電波の状態がよくないようです」のようにお客様以外に原因があることを伝え、それに対してお客様が聞こえやすくする対応をしてくれた場合にはお礼を伝えるようにしましょう。
■電話のたらい回しはNG
電話でのやりとりはお互いの顔が見えない分、些細なことで感情がエスカレートしやすくなります。そのため、電話対応で待たせること、たらいまわしで同じことを何度も説明させることがあってはなりません。
すべての会社やお店がお客様相談室やコールセンターを持っている訳ではありませんので、関係のない部署にお客様からクレームの電話がかかってくることもあります。
その際、「自分が担当ではない」という態度をとってしまったり、どこが担当部署かわらかず、さらに関係のない部署に電話を回してしまうことはあってはなりません。
お客様にとっては、どの部署の人間であっても、その会社の人間であることに変わりありませんので、どの部署で働いていても、自分がクレームの電話を受けることがあると心構えを持つことが大切です。
■反論や言い訳はNG
クレームの電話をかけてきているお客様に対して、言い訳や反論をすることもNGです。なんとかその電話でクレームを治めようとするあまり、お客様を言いくるめてしまおうとしてしまうことがあります。
しかし、怒りの気持ちに満ちたお客様にとっては、言い訳やごまかしをしているようにしか聞こえず、言えば言うほど逆効果となります。
その電話で無理に解決させようとはせず、クレーム対応の基本ともいえる「傾聴」によって、お客様の訴えにしっかりと耳を傾け、状況把握と怒りの鎮静化に努めることが大切です。
■感謝の言葉で締めくくる
電話の切り方は話の内容によって大きく変わりますが、お礼の言葉で終えるのが理想的です。一部の悪質クレーマーを除き、クレームを訴えて気持ちの良い人はいません。
クレームの電話をすることによって、「嫌な客だと思われているのではないか」「もうお店に来てほしくないと思っているのではないか」という気持ちになるお客様もいます。
そんなお客様の気持ちを救うのが感謝の言葉です。お客様からクレームを訴えてもらったおかげで、これまで気づかなかった商品やサービスの不備に気づけた、商品やサービスの開発に役立つ貴重なご意見をいただいたという姿勢を示し、お客様に感謝の言葉を伝えると、そのお客様はこれからもお客様でいてくれる可能性が高くなります。
「ご指摘いただきありがとうございました」
「貴重なご意見として承ります」
「ご連絡いただきありがとうございました」
■いつ電話をかけ直すか具体的に伝える
ビジネスマナーとして、1分以上保留状態で電話を待たせるのはNGとされています。まして、感情的になっているお客様にとっては、とても長く待たされたという印象を受けます。
そのため、担当部署に確認を要する場合や、上司の判断を必要とする場合など、お客様を保留状態で1分以上待たせてしまいそうな時は、一旦電話を切ってから折り返し電話をかける必要があります。
また、クレーム内容の調査後に再度電話を掛け直す場合や、担当者が不在だった場合などで一旦電話を切る場合でも、いつの何時ごろに電話をかけ直すのか伝えておく必要があります。
怒りに満ちたお客様は待たされるのがすごく嫌いです。「調べてすぐにかけ直します」という状況の場合、担当者は翌日にかければよいと思っていても、お客様は数分後にかかってくると思っていることもあり、時間の温度差は担当者とお客様で異なります。
そのため、「すぐに」や「早めに」などの曖昧な言葉は使用せず、いつ頃電話をするのか、具体的なスケジュールを伝えて電話を切るようにしましょう。
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